都留文科大学学報(第145号)
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 みなさん、ご卒業おめでとうございます。 ご卒業を祝し、みなさんに三つのことばを贈りたいと思います。 一つ目は、「置かれた場所で咲きなさい」。これは、渡辺和子さんが同名の著書で言われた言葉です。誰が悪い、社会が悪い、自分をわかってくれない周囲が悪いなど不平不満ばかり言うのではなく、自らが置かれた場所で自分なりの努力をしなさい、という教えです。努力してもすぐに評価されないかもしれません。しかし、本来、努力はすぐに評価されるものではなく、努力が成果として現れ、評価されるまでには時間がかかります。短期的な、ややもすれば表層的で上滑りな成果を期待すべきではありません。 二つ目は、「知足」。「ちそく」と読みます。仏教では「少欲知足」(しょうよくちそく)と言います。あれがほしい、これがほしい、もっとお金が欲しい、高い地位や名誉が欲しいなど、欲しい、欲しいというのではなく、自らの分をわきまえて、それ以上のものを求めない、という教えです。もちろんお金がなくては生活することはできません。だからといって欲望のおもむくまま、やみくもにお金や地位、名誉を求めることは、ほどほどにした方がよいと思います。 三つめは、「いのちを大切に」。一人の人間のいのちは、一つしかありません。いのちはかけがえのないもので、他のもので代替することはできません。最近、「重症化リスクは低い」、「感染者数が極めて少ない」、「亡くなる人はごくわずか」という表現を耳にすることが多いように思います。「低い」、「極めて少ない」、「ごくわずか」であれば犠牲者が出ても差し支えないのでしょうか。「一人の生命は地球より重い」。これはかつて福田赳夫総理(当時)が述べた言葉です。いのちを大切に日々を送りたいものです。 みなさんは、全国津々浦々、留学生の方も入れると、全世界から、この都留の地で学ばれました。いくつもの夢を分かち合い、季節が過ぎ去るこの速さ。ご卒業、本当におめでとうございます。 国際教育学科の1期生として過ごした4年間、いかがでしたか。入学当初は学科事務室がまだプレハブにあったことに象徴されるように、様々な面で整いきっていない新学科でした。教員も新任ばかりで、履修登録などの作業一つひとつが手探りでした。しかし、そうした不便があるおかげで皆さんがどんどんと主体性を発揮し自律していく姿を、いつも頼もしく思って見ていました。交換留学の際にも、1期生は一度も留学生を受け入れる機会もないまま、初の交換留学生として逞しく飛び立って行ってくれました。今の国際教育学科があるのは、皆さんのリーダーシップのおかげです。本当にありがとう。 いま皆さんは、この主体性、自律性とリーダーシップに溢れた若者が集まる小さな集団から旅立っていきます。ここで仲間と共に築いてきた常識が、常識として通用しない場にもたくさん遭遇すると思います。うまくいかないこともあるでしょう。そんな時も、どうかはみ出ることを恐れないでください。迎合して自己を見失うことなく、開拓者であり続けてください。また、皆さんは国際教育学科で、異なる文化的背景や価値観を持つ人たちと対話する力を身につけてきました。だからこそ、対話の場から早々には逃げないでほしいとも思います。はみ出がちな皆さんが対話の場に存在し続け、声を持ち続けることで、世の中が少しずつよくなっていくことを願っています。 ご卒業、おめでとうございます。大いに羽ばたいてね。おくることば開拓者であれ比較文化学科准教授水野光朗国際教育学科講師山辺恵理子おくることば82021年3月10日(水)

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