都留文科大学学報(第145号)
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〒402-8555 山梨県都留市田原3-8-1☎0554-43-4341 URL:http://www.tsuru.ac.jp/編集後記オンラインだからできたこと――「イシグロの庭」からの生中継加藤めぐみ 2020年2月1日0:00。イギリスがEU離脱をした歴史的瞬間を私はイギリス中部のバーミンガムから西に20kmのウォルヴァーハンプトンで迎えた。その日に行われる国際イシグロ学会に参加するためである。日付が変わる瞬間、花火が上がるか、暴動が起きないかと緊張していたが、街は物音ひとつせず、静かにその時が過ぎた。 学会前夜、イギリス人参加者は「EUパスポートが使えないなんてあり得ない!Brexitという言葉も聞きたくない!」と嘆いていたが、ホテルに戻ると一階ラウンジで、EU離脱を祝う仮装パーティーが賑やかに催されていた。残留派 vs. 離脱派と空気の違いを実感した夜となった。 2017年にカズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞して初となる学会には世界中から50名が集った。マスクもせずにパブの密な空間で打ち上げが出来たのも、いま振り返ると夢のようである。 それから半年後の7月11日。同じ主催者が「イシグロと国際的危機」と題するグローバル・セミナーを企画し、イギリスで親睦を深めた仲間たちとオンラインで再会することとなった。セミナー当日と長崎でのリサーチの予定が重なったので、私は学会のオープニングイベントとして、イシグロが5歳まで過ごした長崎の生家からの生中継を提案した。日本でイシグロ学会が開かれたら、生家を訪問したいとのイタリア人研究者の言葉を思い出したからである。 生家は家主が変わり、建物も新しくなっているが、日本庭園は昔のまま。灯籠や古井戸のある庭は短編「夕餉」や『わたしたちが孤児だった頃』などにも描かれていて、イシグロ研究者の関心は高い。オンライン学会だからこそ可能になった「イシグロの庭」の中継。急な提案に快く柔軟に応じて下さった学会主催者、家主の方、長崎のイシグロブッククラブの皆様には心から感謝申し上げたい。都留文科大学広報委員会都留文科大学報 第145号 2021年3月10日発行鈴木健大(委員長)・日向良和(副委員長)・田中昌弥(担当副学長)・長瀬由美・加藤めぐみ・齊藤みどり・佐々木南実・水口潔・藤江毅(情報センター担当)・山本香栄(経営企画課長補佐)・雨宮容一(企画広報担当)・関戸聡子(企画広報担当)・天野麻由(企画広報担当)イシグロの生家跡で、所有者の吉田良三氏と(2020年7月17日『長崎新聞』より)新色は「元気」をイメージしたオレンジ色。コロナ禍におけるマスク着用を表現したアイコンには、笑顔で過ごせるようにとの願いも込められています。*ツルブンステッカーは広報活動の一環として、主に在学生や受験生向けに配布しています。制作の様子はこちらからご覧ください↓その他TUエメラルド、グレー、ピンクなどのバリエーションも学生アイデアによる新ツルブンステッカー完成!

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