ブックタイトルフィールド・ノート no.84 Mar.2015

ページ
35/48

このページは フィールド・ノート no.84 Mar.2015 の電子ブックに掲載されている35ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

フィールド・ノート no.84 Mar.2015

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

フィールド・ノート no.84 Mar.2015

35※生きものは地域や地形などによって、出現や開花の時期が異なる場合がありますので、必ずしも全国的な傾向を示すものではありません。萼筒がちぎられたソメイヨシノ巣に巣材を運び込むスズメの花は香りがよいので、持ち主に許可をもらって枝を少しいただき、春を持ち帰る楽しみがあります。日当たりのいい場所では、フキノトウ(フキの花茎)も地面から顔を出していることでしょう。スズメの巣3月上旬の「啓けいちつ蟄」は、土のなかの虫が動き始めるころです。クロヤマアリは2月中旬には地上に出てくるものがいますが、昆虫の活動が活発になるのは3月に入ってから。明るい山道でテングチョウやミヤマセセリ、ビロードツリアブが見られます。アブラチャンやダンコウバイの花も咲き、ヤマアカガエルの産卵が始まります。「啓蟄」の次候は3月中旬の「桃始笑」(ももはじめてわらう)で、モモの花が咲き始めるころです。じっさい、中屋敷フィールドにあったモモは3月中旬に開花していましたので、概ね一致しています。「春分」の初候は「雀始巣」(すずめはじめてすくう)で、3月中旬から下旬です。スズメが巣作りを始める時期のことですが、スズメの巣を見たことのある人はどのくらいいるでしょうか?同じように人家に巣を作るツバメとは違い、スズメの巣は建物の隙間などにあるため、巣そのものが見えることはありません。しかし、建物の隙間や巣箱から巣材の一部が出ている場合があることから、そこにスズメが巣を作っているとわかります。蜜を盗む「春分」の次候は3月下旬の「桜始開」(さくらはじめてひらく)。サクラ類の花が咲き始めることを意味します。いま、私たちの身近にあるサクラ類といえばソメイヨシノで、学校や市区町村などの公の建物の周辺によく植栽されています。ソメイヨシノは江戸末期春を告げるフクジュソウから明治初期に作られた園芸品種ですので、ここでいう桜は在来種のヤマザクラだと思います。花期や分布域を考えてもヤマザクラが妥当と考えられます。ところで、メジロやヒヨドリはソメイヨシノの蜜をよく舐めに来ます。スズメもソメイヨシノの蜜を利用しますが、スズメの場合は萼がくとう筒(いわゆる花びらのつけ根)のところをちぎって蜜を舐めます。これを盗とうみつ蜜と呼びます。スズメが盗蜜をしたソメイヨシノの花は地面に落ちていることがあるので、今年はぜひ、盗蜜の痕跡を探してみてください。二十四節気と七十二候にある春の生きものを紹介してきました。寒く厳しい冬が終わるころ、鳥のさえずりや昆虫の出現、ウメやサクラ類の開花など春を告げる事象に触れるのは嬉しいものです。ここには、春を待ちわびる心情があらわれているように思えます。フキノトウフキノトウ