ブックタイトルフィールド・ノート no.84 Mar.2015

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フィールド・ノート no.84 Mar.2015

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フィールド・ノート no.84 Mar.2015

31「レストラン鎌倉」を営む中なかむら村圭けいじ二さん(52)は、マスターの愛称で親しまれており、お店に出す料理は仕込みから調理まですべて一人でなさっている。今の経営者はマスターだが、「レストラン鎌倉」自体はマスターが経営する前からあり、かつてはご自身もこのお店でアルバイトをされていた。大学卒業後、会社勤めをしていたあるとき、当時経営していたかたがお店を離れるということで、マスターに譲ってくださることになったという。どうして「レストラン鎌倉」を継ぐことにしたのか。お店を継いだ理由には、もともと料理などを作ることが好きだという気持ちが大きく影響しているという。お店を継いでからの3ヶ月ほどは、余裕がなく現在よりも忙しく感じたそうだ。それに比べて今は仕事が身に付き、余裕がもてるようになった、とおっしゃるようすは過去の自分を懐かしむようだった。今では忙しいときでもお客さんと会話をしながら調理をしたり、アルバイトのしている作業まで把握していたり、自分以外のことにまで気を配っている。そんなようすを見ている私からすると、余裕がなかったという当時のようすは想像しにくかった。自分の信じる「美味しい」働いていて、ここの料理は美味しいから紹介したい、と友人や恋人と一緒に来るかた、美味しいと噂を聞いて遠方からいらっしゃるかたが多いように感じる。帰るときにはみな「美味しかった」と満足した表情をしているから、料理を作っていない私まで誇らしくなる。マスターが作る料理は、思わずだれかに教えたくなるような味なのだ。この味はどうやって見つけたのか、厨房に立つマスターに尋ねた。すると、味を決めるとき基本となっているのは、これまでに自分が食べてきたものから学んできた味だという。そのなかから、「美味しい」と思った味をお客さんに出しているとおっしゃっていた。お店に来るお客さんは子どもからお年を召したかたまでさまざまだ。どうやったら自分の味が幅広い年齢のかたに美味しいと思ってもらえる味になるのか、さらにお客さんのようすから学んだそう。口に出さなくても美味しい料理は残さず食べるもの。食べ終わったお皿を見れば、その人が満足してくれたのか分かるとおっしゃった。マスターが今までに美味しいと感じてきた味が、「レストラン鎌倉」の味を支えている。相手を認めるということこのお店ではお客さんとマスターのあいだに多くの会話がある。なかでも常連さんとは話をすることが多い。その内容は、共通の趣味や最近のニュースなどだ。私はお客さん相手と考えると、相手に好意をもってもらおうと自分の本心とは違うことを言ってしまうときがある。しかし、マスターはお客さんと話すさい、すべて本音で話しているという。それはとても勇気がいることだろう。心がけようと思っても簡単にできることではない。