ブックタイトルフィールド・ノート no.84 Mar.2015

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フィールド・ノート no.84 Mar.2015

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フィールド・ノート no.84 Mar.2015

27ショートカットの髪に茶色のスカーフ。少し遠くでにこにこしながらこちらに手を振るのは佐さとう藤悦えつこ子さん(37)。あまりにも満面の笑みを向けてくださるので、近づくのを待たずに、とっさに声を張ってあいさつをした。お話をうかがうため私がやって来たのは、ご自宅近くの高尾神社。佐藤さんは、わざわざご自宅からこちらまで迎えに来てくださったのだ。佐藤さんは周りの人から「えっちゃん」「えっこさん」と呼ばれている。明るくて気さくなようすからは、そう呼びたくなるのもよくわかるし、それを聞いた私も、親しみを込めてえっこさんと呼んでいる。尊敬する人としてえっこさんを紹介してくださったのは、カフェナチュラルリズムを経営するヒーコさんこと若わかばやし林英ひでゆき行さんだ。ヒーコさんとえっこさんの出会いは今から7年ほど前。当時、東京でカメラマンのお仕事をされていたえっこさんが出張で山梨に来たさい、ナチュラルリズムを訪れたことがきっかけだ。カフェを気に入ったえっこさんは、それから仕事がなくとも、暇ができれば通うようになったという。えっこさんはナチュラルリズムを「ただのカフェじゃない。もう家族。家ですね」とおっしゃる。このように言うのもおふたりが親しい間柄にあるから。それを表す出来事のひとつが東日本大震災だ。震災後、世間が混乱に陥ったとき、なんとえっこさんは、ナチュラルリズムでお子さんと2週間のテント生活を送っていた。後になって子どもに何かあったとき、自分が何もしなかったことで後悔したくないという思いから、テント生活を決意。ヒーコさんに連絡したところ、ふたつ返事で了承してくださったそうだ。誰かがこう言うからではなく、えっこさん自身のものさしで物事を考え、それに基づいて行動を起こす。ここに、えっこさんの芯の強さを見た気がした。ここでなんかやりたいテント生活を送っているあいだ、えっこさんは新聞に掲載された一枚の写真を目にする。それは、まだ小さな女の子が、両親が亡くなっていることを知らずに、両親への手紙を書きながら眠ってしまった写真。その女の子のほおには涙が伝っていた。これを見たえっこさんは思った。「ここ(ナチュラルリズム)でなんかやりたい。みんなが笑うような。子どもの笑顔がないとやっぱ未来はないな」。こうして考えられたのが、東日本大震災の復興チャリティイベント「ルナソル」だ。この名前には、太陽と月のような子どもという意味が込められ、大人も子どもも楽しめるイベントが多く企画された。クラフトに講演、ライブ。坂を利用して流しそうめんをしたり、川に舟を渡したり、子どもが入れる五右衛門風呂を設置したり。これを聞いて、思わず私は「楽しそう」と口にしていた。参加する人、企画する人どちらの気持ちになってもそう思う。なぜなら、「ルナソル」のお話をしているときのえっこさんはいつでも笑顔だったから。誰かを楽しませるイベントをまずはえっこさん自身が楽しんでいたのだ。笑顔で話すえっこさんを見ていると、思い悩むことなどないかのように思えてしまう。えっこさんのお話には、つらかった話や苦労した話がほとんど出てこないのだ。けれど、それは決して悩んでいないわけではなくて、