ブックタイトルフィールド・ノート no.83 Dec.2014

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フィールド・ノート no.83 Dec.2014

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概要

フィールド・ノート no.83 Dec.2014

7ビがいる。今まで入り口に来ていることも知らなかったが、工事中でも逃げずにいるということには驚きだ。入り口付近から奥に向かって50m?ほどの両斜面には、オバボタルという陸生のホタルが生息している。木の葉の下などで暮らしており、ライトを消して歩くと、徐々に波紋を描くように広がっていく優しい光が現れる。光るのは幼虫で、成虫になると光らなくなるそうだ。今年は工事によって山道のすぐ横まで木が切られ、昨年オバボタルが生息していた場所の半分ほどが削られた。今では谷側にあった森林はなくなって、向こう岸が見えるようになっている。この状態でもホタルはいるのだろうかと心配しながら歩いていると、草の陰で薄黄緑色の光を小さく放っていた。よく見ると工事で削られたはずの道のわきでも光っている。光が見えるところを慎重に探すと小さな幼虫がいた。身体は落ち着いた藍色をしていて、そっと持ち上げると手のなかにやわらかい光が広がった。もうホタルは見られないのだろうと思っていたから、ホタルの光がいっそう輝いて見えた。この機会を新たな視点で工事により、年月をかけてできた木や豊かな土壌がなくなり、生きものの住む環境は大きく変わっている。聞き慣れない重機音が響き、日を重ねるごとに山のようすが変わっていく。野生の生きものからしたら、一体何が起こっているのか理解できない状況だ。しかしそんな状況でも、すぐそばでは今までと変わらず、ムササビやホタルが暮らしていた。そのようすを目の当たりにして、私が思っているよりもずっと彼らは強く、周りの出来事に対して柔軟に対応していると感じた。このさき工事が完了したとき、うら山がどうなるのか想像もつかない。けれど自然だって一方的になくなるわけではない。時間はかかったとしても、その場所に順応した植物が芽吹き、そして再び生きものがやってきて暮らしていくだろう。私は、自然のなかで生きものが強く生きている姿を垣間見たことで、今まで親しんだ景色を心に留めつつも、また新しくうら山が変わるひとつの出発地点として、今の状況を捉えたい。工事によって木が伐採された山道。この場所の近くでムササビの鳴き声を聞いた(2014.12.03)オバボタルの幼虫(2014.10.18)オバボタルの幼虫(2014.10.18)オバボタルの幼虫(2014.10.18)秋になって鮮やかに色を変えたマムシグサ(2014.12.06)(撮影:南條新)頭