ブックタイトルフィールド・ノート no.83 Dec.2014

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フィールド・ノート no.83 Dec.2014

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概要

フィールド・ノート no.83 Dec.2014

私の尊敬している人にもまた、尊敬している人がいた。私が出会ったあの人がすてきだと思う人はどんな人だろう。第3回でお話をうかがったのは、菊きくち地富ふみお美男さんにご紹介いただいた「ヒーコさん」。カフェを営むヒーコさんとはどんなかただろう。第3回尊す敬る人のの人あ街灯ひとつない真っ暗な道。先に進むのを一瞬ためらうほどの坂を降りれば、少しずつ木漏れ日のような明かりが見えてくる。ここは、都留市つるにある中央自動車道から一本外れた路地。少し奥まったところにあるお店の前の小道には、『カフェナチュラルリズム』の看板がある。ぼんやりと看板を灯す明かりは、その場を闇に浮かび上がらせているようだ。キャンドルが道標のように点々と置かれた道を行けば、扉の前にたどり着く。そして引き戸を開けると、「こんばんは」の声が店内に響き渡り、やっと着いた、と安心感が込み上げるのだ。声の主は、ヒーコさんこと若わかばやし林英ひでゆき行さん(47)と奥さんの千ちあき秋さん。店内へ入って右側にはL字型の木製のカウンター席があり、その奥のキッチンにいつもおふたりが立っている。カウンターの前にはいつ来ても誰かがいた。仕事帰りでスーツを着た人や小学生とそのお母さん、ときには大学の友人やまちの商店街の人とばったり会うこともあった。さまざまな人と会えるのは、ヒーコさんが以前働いていたカフェの形を参考にして、営業時間を20時から25時と遅い時間帯にしたこともひとつの理由だろう。お客さんのひとりが言う。カウンター席にひとりで座る人の多くは、ヒーコさんと話したくて来る人ではないかと。その人が言うように、いつでもカウンター席にはヒーコさんとの会話を楽しげにしている人がいた。全然あれになんなかったお店の左側にあるのは、じんわりと暖かい薪ストーブと体を包み込むようなソファ。窓際を照らす色とりどりの明かりは、ステンドグラスでつくられたキャンドルランタンだ。ソファにもたれ、ランタンのゆらめく火を見つめていると、ついうとうとしてしまう。気張らずに安らぐことができるカフェナチュラルリズムは、じつはヒーコさんの手によって改装されたお店だ。今から13年前、当時大工の仕事をしていたヒーコさんは、前々からお店を開きたいと思っていたが、納得のいく場所を見つけられずにいた。しかし、冬場の仕事がない時期に暇をもて余し、散歩をしていて見つけたのがこの場所。当時は建物も小屋のようで、草も背丈ほどに生い茂っていたという。けれど、目の前には広葉樹と針葉樹が交じり合って広がり、見下ろせば川が流れる風景に、ヒーコさんは魅了された。それから4年もの歳月をかけて建物を改装し、2005年、カフェナチュラルリズムは開店した。ヒーコさんが顔をほころばせて無邪気に言う。「でもね、全然あれになんなかったよ。ここに来てやろうと思うんだけど、本読んじゃったり、たまにはビールとか飲んじゃった若林英行さん伊藤瑠依(社会学科2年)=文・写真40no.83 Dec. 2014