ブックタイトルフィールド・ノート no.83 Dec.2014

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フィールド・ノート no.83 Dec.2014

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概要

フィールド・ノート no.83 Dec.2014

39つやと光っている。ネズミだ。思わず、あっと声が出た。体温がほわーっと上がった気がした。そのネズミは、一回姿を見せるとその後も数分間隔で何度も何度も私たちの前に姿を出してくれた。初めのうちは警戒しているのか、穴から少し顔をのぞかせてこちらの様子をうかがっていたが、少しするとカメラのシャッター音も気にせずケースのなかのほうまで入ってエサを食べ始める。結構大胆な行動をするものだ。今回会えたのは、アカネズミという種類の野ネズミだった。一番印象的だったのは、顔からこぼれ落ちそうなほど大きくて黒い目だ。くりくりしたまん丸の目だった。茶色の毛並みに、思わず手を伸ばして触れたくなってしまう。透けそうなほど薄くて大きな耳。体と同じくらい長いしっぽ。もう冬毛なのか、少しまるっとしておなか側の白い毛はふわふわだ。ヒマワリの種に小さな前足を添えて、かりかりと食べている。なんて、なんてかわいいんだろう。つい見とれてしまった。見ていてまったく飽きない。結局その日は、1時間半くらいのあいだに何度も出てきてエサを食べては、またどこかに走っていくというのをくり返していた。夢中になって見ていたからか、山を下り始めてからやっと本当に会えたんだという驚きと嬉しさが追いついてきた。小さな背中を追いかけようずっと会いたかった野ネズミ。以前は、ただ会いたい、目の前で見てみたいというだけだった。けれど出会ってからは、次から次に謎が湧いてくる。こんなに触れられそうなほど近くにいても恐くないのか、人が触ったエサでも気にならないのか、電気の明かりやシャッター音にもすぐに慣れてしまうのか……。出会えたことで前とは違った視点から興味をもてるようになっていた。彼らのもっといろいろな姿を見てみたい。自然のなかで走り回ったり、子育てしたりしているところをじっさいにこの目で観察したい。まだまだ知らないことは山ほどある。こんなに魅力あふれる生きものに出会ったのは初めてだ。この日、見ることができた嬉しさを忘れたくはない。これから私はどれだけ彼らに近づけるだろう。今からわくわくしている。「こんばんは」。ケースの穴から顔をのぞかせ、エサを食べる大桑小屋のなかの様子立ち上がって辺りの様子をうかがうケースの下にはヒマワリの種の殻が散らばっていた