ブックタイトルフィールド・ノート no.83 Dec.2014

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フィールド・ノート no.83 Dec.2014

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フィールド・ノート no.83 Dec.2014

31別符沙都樹(国文学科3年)=文・写真地域のお店だからこそお店に来るお客さんたちは、スポーツの打ち上げや地域の催し物の相談をする人などさまざまだ。そのような集まりのうちのひとつが「無尽」なのだそう。娘さんは「自分たちも『無尽』の(繋がりの)ひとつ。人との繋がりを大切にしている」とおっしゃった。ただ食べるだけが目的ならばチェーン店でも問題はないだろう。しかし「無尽」の人たちが地域のお店を利用するのは、地域のお店だからこそ、があるからだ。「無尽」は顔を見ながら一緒のものを共有することに大きな価値がある。みんなでひとつの大皿に乗ったものをつつき、飲み食いする食事はあくまで親交を重ねる方法のひとつだという。なにより大きな目的は集まることで、親睦を深めることなのだ。そんななか、いらっしゃるお客さんごとの好みを把握して料理を出したり、時折季節のものをメニューに出したりする。そういった彩りを添え、工夫を凝らせるのはお客さんとの繋がりが強い地域のお店だからだ。聞いたことのない風習「ほかに言えるようなことはないよ」と言いつつ、「無尽」関連の話はないかとお三方とも記憶を手繰り寄せるように真剣に考えてくださった。「あとは家族会みたいな?」と娘さんがふとおっしゃる。邦昭さんも「ほうだ(そうだ)兄弟会」とピンときたらしく、ぱっと顔を上げた。昔は兄弟が多かった。その兄弟の人たちがそれぞれ夫婦で連れ立ち、定期的に集まりコミュニケーションをとるのを兄弟会というそうだ。「無尽」同様形態はさまざま。家族会も集まる人が兄弟か家族かの違いだそう。まったくもって聞いたことのない風習だ。しかし、聞いたことはないものの「無尽」の集まりに似たような雰囲気がある。邦昭さんは「あんたっちの所でもあると思うよ」とおっしゃっていたが、気づかなかっただけで私の周りにも存在するものなのだろうか。私の様子を見て、「イエミ」って知らないでしょ、とさらにもうひとつ風習を教えてくださった。「家を見せるってことだよね」と娘さん。「そうそうそう」と邦昭さんが頷く。「イエミ」とは、家を新築したときに地域の組の人を呼んで家を見せることだそう。昔はそのままその家でお食事をして会話を楽しんだ。しかしそれが大変だとなったときに、家を見せた後お店へ場所を移すようになったそうだ。こちらも聞いたことのない風習だ。さらに娘さんが付け足す。「あるとこはあるけど、だんだん薄れてきてるよやっぱ」。その言葉で、いきなり視界が開けたような気がした。風習や集まりが変わってきているのは「無尽」だけではない。私は今まで「無尽」というただ一点だけを追ってきたけれど、目を向けるべきなのはそれだけなのだろうか。周りに息づく風習。これは、お話を聞く機会がなければ知る由もなかった。「無尽」はそんな周りにある移り変わりのひとつに過ぎない。それを強く実感した。あらゆる事柄に文化や風習の息吹を感じ、目を凝らすこと。もっと視野を広くもつことが、そっと息を潜める「無尽」やそのほかの風習の息遣いに気づく方法なのかもしれない。