ブックタイトルフィールド・ノート no.82 Aug.2014

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フィールド・ノート no.82 Aug.2014

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フィールド・ノート no.82 Aug.2014

15自然のなかに広がるわさび畑6月25日。東桂の細い路地に入って坂を下っていくと、そこはふだん見ている都留市とはまた違った光景だった。車の窓からすぐ左を見れば、湧き出した富士山の水が岩を伝って滴り落ち、右を見れば山々がぐっと近くに感じられた。そんな光景に挟まれた道の先に、都留市で唯一のわさび畑がある。雨が降るなか、さっそく「菊地さん」にお会いすべく、車を降りてあたりを見渡した。すると、すぐに目に入ったのは、手書きの横断幕。見れば、私の名前と歓迎の文字が書かれているではないか。思わぬ贈り物に始めは驚いたが、心遣いがうれしくて気がつくと口元がゆるんでいた。会ったこともない私をここまで歓迎してくださるなんて、どんなかたなのだろうと期待で心がはずむ。そんなことを思っていると、ひとりのかたが慣れた足取りで坂を下ってきた。こんにちは、と張りのある大きな声とともに、頭に巻いていたタオルをさっと取り会釈をする。褐色の肌に笑みを浮かべ、はつらつとした姿。このかたが東桂で無農薬のわさびを作っている菊きくち地富ふみお美男さん(46)。山口さんとは、菊地さんがほしのさと工房を訪れたことがきっかけで知り合ったという。おふたりとも無農薬の食材を大切にしており、そのことから深く交流をもつようになった。山口さんが尊敬する菊地さんとはどんなかただろうか、お話をうかがった。3代目のわさびの作り手菊地さんと私が向かい合わせに座るその横で、背筋を正して座っているのは山やまむろしょうご室正吾さん。いつでもまわりに気を配り、明るく声をかけてくださる山室さんは、昨年からこのわさび畑に手伝いに来ており、今年の4月からは菊地さんとともに働いている。前職を辞めここで働くと決めた山室さんの一番の理由は、菊地さんの人柄だという。はにかみながら菊地さんを「兄貴的な存在で」と言う山室さんと、それを聞いて「よく言うよ」と冗談っぽく返す菊地さん。おふたりのテンポのよい会話を聞いていると、これは気心知れた仲だからこそできる会話に違いないと思い、自然と顔がほころんだ。現在の菊地さんの代でこのわさび園は3代目にあたる。初代が富士山の湧水をなにかに利用できないかと考え、わさび作りを始めた手書きの横断幕。横1メートルほどの大きさがあるわさび畑のようす。暑さに弱いため直射日光を避ける黒いネットが掛けられている