ブックタイトルフィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

西丸尭宏(本学卒業生)= 文・写真2014年5月25日。私がうら山を歩いていると、まだ葉がひらいて間もないというのに、青々とした葉がちらほらとまとまって落ちているところを見つけました。1枚を拾いあげてみると、葉にはどれもイモムシに食べられたのとはまた違う、かじり取られたような形跡があります(タイトル写真参照)。主脈(※)を中心に、きれいに左右対称。ほかの葉を見ると、必ずしも葉脈に沿ったものではなく、葉の真ん中に穴が空いたようなものから、縁をかじられたようなものまで、さまざまなパターンがあります。そのとき、私はそれがムササビの食痕だと直感しました。私個人としては、うら山で見つけたのは初めてのことです。それだけに感動もひとしおで、ムササビが葉を食べる姿がぼんやりと浮かび上がってくるようでした。しかし思い描けるイメージはぼんやりとしたものだけ。彼らがどうやって葉を食べるかがはっきりと思い描けないのです。彼らはどんなふうに手(前肢)を使い、葉を食べるのでしょうか。ムササビの剥製を製作した経験上、成獣の体重は1㎏ほどはあります。まずそれを支えることのできる枝にいたのでしょう。そこから葉をたぐりよせるのか。もしくは枝から千切りとるのでしょうか。それに葉に左右対称の痕跡が残るということは、葉を折りたたんで食べているということです。そもそもどうして、葉を折りたたんで食べるのでしょうか。こんな疑問を抱いたのなら、もうじっさいにそのシーンを自分の眼で確かめるほかありません。ひとつの痕跡からムササビへの興味がどこまでも深まっていきます。センサーカメラに写る動物の姿はたしかに「そこにいた」ことは教えてくれますが、つい記録というだけで終わってしまうことがあります。それに比べて食痕は、姿そのものはその場そのときに確認できませんが、「いた」という事実を食痕という「ほんもの」が教えてくれます。食痕ひとつに隠された物語を解き明かしていくたのしみ。それは動物の生活史という物語を読み解いていくようなおもしろさがあります。スギの根元に佇むムササビ(2011 年10 月6 日)※葉の中心を通るもっとも太い葉脈。水場に落ちた葉が葉脈だけになっているのをよく見かける。右の写真のように横からみるとわかるが、ムササビの手はU 字になっている。手の付け根に大きなこぶがあり、枝などを掴むには適した形をしている。もしかすると「U 字」になっているがために、葉を掴むと折りたくなくても折れてしまうのかもしれない。左手(左前肢)のてのひら右手(右前肢)の側面