ブックタイトルフィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

no. 81 Jun. 2014 14 お店を出るとき、嘉男さんが紙袋を持たせてくれた。なんだろうと思い、袋のなかを見るとのし付きのティッシュケースが2箱入っていた。のし付きのティッシュなんてもったいなくて使いづらいな、と心のなかでつぶやきながらお礼を告げ、お店を後にした。「旅苑」の50年 4月21日、お話を聞くためにわたしは再び純喫茶「旅苑」に訪れた。 以前織物に携わるお仕事をされていた嘉男さんは、織物を配達するために東京方面へ足を運ぶ機会が多かったそうだ。そのさい川崎にある「オスカー」という純喫茶によく訪れたという。美人のドアガールが出迎えてくれるそのお店が好きで、お店の雰囲気にあこがれた嘉男さんは自分も喫茶店を開きたいと考えたそうだ。その後、三島にあるレストランで飲食店を開くにあたっての指導を受けた。 自分のお店を持つことに不安や迷いはなかったのか尋ねると、「不安とか、そんなものはなかった」という答えがすぐに返ってきた。喫茶店を開きたい思いが強く、そのための準備も整えていたからなにも恐れる必要はなかったと。そうきっぱりとおっしゃるようすからもそのことが伝わってきた。 しかし、いくら不安はなかったといっても、じっさいにお店をはじめてみればやはり苦労はあったという。とくに、お店をはじめてから最初の3年間はずっと赤字続きだったそうだ。赤字の理由は、アルバイトを大勢雇っていたためだ。商品一つひとつの単価を安く設定していたため、お店の収入はそう多くはなかった。けれど大勢いるアルバイトたちの給料は払わなければならず、経営は苦しくなったという。それでもお店をやってこられたのは、お店を営業する目的が利益をえるためではなかったからだと嘉男さんはおっしゃった。「儲けようと思ってやってないから。ふつうは儲けるために店を開くだろ。希望にふくらんで開店するけど、よく終わりあること少しと申されるように? うちは儲けるためじゃないから」利益をえるよりも、自分の好きなようにやってきたから約50年も続けてこられたという。嘉男さんはなんてことはないようにおっしゃったけれど、お店を経営するうえで利益を後回しにし、長年続けるというのは、わたしには大変で難しいことのように思えた。 儲けるためでないなら、なんのためにお店を続けてきたのだろう。お店を続けるうえで支えになったものはありますか、とわたしが尋ねると、「大変よい出会いがあること」という答えが返ってきた。お客さんやアルバイトなど、「旅苑」を通じて出会った人たちとは彼らが卒業したり、都留を離れたりした後でも付き合いが続いているという。「思い出は人生の宝だ」とおっしゃる嘉男さんの思い出話にはいつも誰かが登場する。「旅苑」で生まれた数々の出会いは嘉男さんにとって宝物となり、お店を続ける嘉男さんや純喫茶「旅苑」というお店を支えてきたのだろう。内装から見える思い 「旅苑」の店内を見回していると、わたしはあることに気づいた。緑色のランプだと思っていたものは、よく見ると緑色の電球にガラス製のグラスを被せたものだったのだ。こんな発想思いつくなんてすごいですね、とわたしが言うと、嘉男さんは微笑んで「使えるものは使うんだ」とおっしゃった。聞けば