ブックタイトルフィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

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フィールド・ノート no.81 Jun.2014

13 4月12日、純喫茶「旅苑」を尋ねてみた。 どんな雰囲気のお店なんだろう、どんなかたがいらっしゃるんだろう。期待に背中を押され入り口の扉を開く。わたしはカウンターやテーブル席が並ぶ光景を想像していたが、そこには短い廊下がのびていて、その終わりに電子ピアノともう一枚扉があるだけ。入店するにはもう一枚扉をくぐらなくてはいけないようだ。想像していた光景と違ったことに驚きつつも進んでいくと、電子ピアノの上にボタンが置いてある。これは押したほうがいいのだろうか。戸惑っていると、店内からお店のかたらしき男性があらわれ、「そのボタンを押してから入るんだよ」と教えてくださった。ボタンを押して入店した学生には、ワンタッチメニューというサービスが用意されるそうだ。吉野嘉男さんとの出会い お店のなかは外観から想像していたよりも広く、そして昼間にもかかわらず暗かった。けれどただ暗いのではない。オレンジ色の灯りをともすシャンデリアや、ピンク色や緑色のランプがところどころ店内を彩っている。カウンター席は薄暗いお店のなかでひときわ明るく、そこだけ浮かび上がって見えた。お店のなかにはもう一人、先ほどの男性の奥さんらしきかたがカウンター席に座っていらっしゃった。 先ほど出迎えてくださったかたは「旅苑」の店主である吉よ しのよしお野嘉男(77) さんだ。カウンター席にいらっしゃったのは奥さんの史ふ みえ江さん。都留にお店を構えてもうすぐ50年になるという。このお店の歴史の重さに驚き、わたしはあらためて店内を見回す。 カウンター席に着きパフェとウインナーコーヒーを注文した。すると、お二人は手分けして、パフェを作る準備をはじめられた。てきぱきと、息ぴったりでグラスにクリームや果物を盛りつけていくようすが、お二人が長年連れ添い、このお店を切り盛りしてきたことをあらわしているようだ。 完成したパフェを食べながら、わたしは吉野さんご夫妻といろいろな話をした。なかでも印象に残ったのが、嘉男さんが今まで「旅苑」にきたお客さんの名前や性格をしっかり覚えていることだ。とくに本学の学生は嘉男さんの思い出話のなかに多く登場した。話しかたは少しぶっきらぼうに感じたけれど、一人ひとりとのエピソードを話すようすからは、嘉男さんが彼らを大切に思い接していたことが伝わってくる。嘉男さんを慕い、お店にやってくる彼らのようすが浮かんでくるようだ。入り口スペースにあるこのボタンを押してから入店する「旅苑」の店内。緑色に光るランプは、電球にグラスを被せてできている